山梨県生協連 〜県内5生協の力をあわせて〜

2022年度 県連講演会を開催
2022年12月14日更新
「アニマルウェルフェアを学ぼう!」を開催しました
山梨県生協連では、一般組合員や会員生協の役職員を対象に、最近ニュースなどで目にする「アニマルウェルフェア」について講演会(オンライン)を開催しました。信州大学農学部准教授の竹田先生から基礎知識や今の課題などを学び、アニマルウェルフェアの考え方を取り入れている黒富士農場の向山さんからは生産者の状況が報告されました。また、山梨県の畜産においては、アニマルウェルフェア全国初の認証制度を創設しており、この制度について山梨県農政部の金髙さんから報告をいただきました。当日は68名の組合員・会員生協の役職員が参加し理解を深める講演会となりました。
〈参加者の声〉
・アニマルウェルフェアは生産者だけの問題ではなく 食品メーカーや物流、消費者までの フードサプライチェーン
 全体で考えていかないといけない事が分かりました。私たち消費者の意識改革がとても大切だと感じたので、アニ
 マルウェルフェアの啓発をしていきたいと思います。

・竹田先生のお話も分かりやすかったですし、生産者さんや県の取り組みも合わせてご報告されたのが良かったです
 。消費者に出来ることは商品購入以外にもあるのでしょうか?
日 時 : 2022年12月3日(土) 10:30~12:00
会 場 : オンライン(ZOOM)開催
講 師 : 信州大学農学部准教授 竹田 謙一 氏
      生産者 農業生産法人黒富士農場 代表取締役 向山 洋平 氏
      山梨県 山梨県農政部畜産課 金髙 弘志 氏
参加者 : 68名 
Q&A
Q. 国内で既にアニマルウェルフェアに取り組んでいる生産者さんへの行政支援は、何かあるので
  しょうか?また、そのような支援への働きかけは何かしているのでしょうか?
A. アニマルウェルフェアに特化した国の財政的支援は現在ありません。そのため、県として農林
  水産省へアニマルウェルフェアに対応した機械導入等も対象となる補助事業を組むよう、要請
  活動を行っています。
Q. 消費者に出来ることは商品購入以外でもあるのでしょうか?
A. 先ずは、店頭に並んでいる各種畜産物が、どのような過程を経てきているのか、また、生産現
  場の様子はどうなのだろうか、という点に興味を持っていただきたいと思います。家畜防疫上
  の理由で、生産農場に容易に入場できる時代ではなくなりましたが、ぜひ、生産者との対話を
  目指していただければと思います。
Q. 採卵鶏の平飼いの場合、個体によっては卵を定位置に産まない鶏もいると思うのですが定位置
  に産むための教育などやっていることがあれば教えて頂きたいです。
A. 採卵鶏の平飼いの場合に巣外卵対策として弊社では導入当日に全ての鶏達をスラット上で1週
  間過ごさせたる、登り木や止まり木の設置を行い巣箱になじみやすい環境にしています。また
  点灯管理プログラムを行い夜に鶏達を巣箱の中で過ごさせる工夫もしています。
Q. 店頭価格競争へのベーシックインカムなど取り組みに積極的になれる措置はどのように講じる
  のか儲かる仕組みがなければ単純に資金力レースで大手のみの淘汰になります。そのあたり県
  の方にも展望を詳しく伺いたいです。
A. 県は、前述したようにアニマルウェルフェアの取り組み推進のための補助事業組み立てと予算
  確保を国に要請しています。また、県としてもアニマルウェルフェアでブランド化を進め、ア
  ニマルウェルフェア商品の適正価格販売を支援していきたいと考えています。
Q. 消費者アンケートの活かし方について疑問ですが、意識調査と実際の家計の問題で買えない選
  択があると認知関心のみでなく、20%ペイできるベーシックインカムを載せて店頭価格を下げ
  ないと厳しいと思います。オランダ・デンマークだけでなくEUでも農業を食の国防と捉えて農
  家の所得保障をしています。日本では生産者と消費者負担になっています。誰でも買えるアニ
  マルウェルフェアへの取り組みの展望はありますか?
A. 講演後の質問でもお答えしましたが、今の日本では残念ながら欧州のように、アニマルウェル
  フェア実践生産者への補助金はありません。したがって、生産者の努力が店頭販売価格に上乗
  せされるか、あるいは、生産者がコスト分上昇分を自身で背負うのかの二択です。ご質問にあ
  るように消費者負担、生産者負担を強いらない方法としては、行政による援助が必要なので、
  そのことを消費者一人一人が、あるいは、消費者団体と生産者団体が一丸となって、行政に訴
  え続けるしかないと思っています。どうも、農林水産省は学者が声を大にしても、それは一部
  の主張としかとらえておらず、生産者の大きな声があってこそ、補助金メニューの検討に値す
  るというスタンスのように感じます。
Q. エシカル消費に畜産物の認証マークがないとのことでしたが、そうすると消費者は選んで購入
  することができません。今後、マークを導入する動きなど検討されているのでしょうか?県内
  ではシールがあるようですが普及はされていますか?
A. やまなしアニマルウェルフェア認証制度でアチーブメント認証を受けた農場から
  生産された畜産物へは認証マークを貼ることができます。認証マークが貼られた
  商品は徐々に出荷されていますが、認証間もないため、出荷数や認知度は依然低
  いままとなっています。そのため、県として認知度向上を図るための事業に取り
  組んでいるところです。
Q. TPP以降のISD条約において畜産分野でのアニマルウェルフェアで先生が気になることはあり
  ますか?
A. なかなか難しい質問ですね。投資家サイドは主に、食品メーカーに対して種々のプレッシャー
  を与えているのが現状です。アニマルウェルフェア問題が食品の輸出入問題にならない限りは、
  ISD条約で政府が動くことはなく、あくまでも民間主導でという立場ではないでしょうか?
  衣料品メーカーで問題として挙げられている人権問題については、企業のみならず、国家とし
  ても大きな問題ですので、こういった課題については、ISD条約の中で取り上げられのだと推
  察いたしますが、畜産分野におけるアニマルウェルフェアについては優先度がそこまで高くな
  いこともあり、短期的な視点では、ISD条約とアニマルウェルフェアの関係は表面化しない、
  あるいは投資家すらも問題視しないと考えます。